海外渡航回数が多い方は出入国在留管理庁から出入国履歴を取り寄せると、自分のこれまでの海外渡航の記録が入手できます。
筆者が取り寄せた出入国履歴に不思議な表記があったのでご紹介します。
出入国履歴とは
この記事で言う出入国履歴とは、個人情報保護法に基づき出入国在留管理庁(旧・法務省 入国管理局)へ開示請求して得られる「出帰国記録調査書」の事です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
出入国履歴における台湾の国名表記
さて私の海外渡航回数ダントツNo.1は台湾です。
出入国履歴を取り寄せる前から台湾の国名表記がどうなっているか気になっていました。
というのも日本国内の公文書では国名を「台湾」と表記しないケースがこれまでも多々あったからです。
例えば2012年7月以前に日本在住の外国人が取得していた外国人登録証は、台湾人の国籍欄に「台湾」と表記されず「中国」「中国(台湾)」などになっていました。そのため外国人登録証を身分証明として作成する運転免許証も「中国」「中国(台湾)」となっていました。
現在は制度変更のため外国人登録証が在留カードに代わり、台湾人の国籍欄は「台湾」と明記されています。
しかし現在でも台湾人が日本で結婚した時に作る戸籍の国籍欄は「中国」となっています。
これは1964(昭和39)年6月19日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっています。
1964年といえば日本が中華民国と国交があり「中国を代表する政府は中華民国」としていた時期です。
半世紀以上前の通達がいまだに生きているお役所仕事っぷりには驚きますが、いい加減見直しをするべきだと思います。
さてそんな背景があるので出入国履歴の国名表記がどうなっているのか?
「台湾」でなければ、「中国」「中国(台湾)」「中国台湾省」あたりか?
スポーツの例に倣って「チャイニーズ台北」「中華台北」あたりかも?
そんな事前予想をしてました。
そして実際の表記はこちら。
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・・・え?
「華北台北」って何だ!?
政治的な話はさておき、少なくとも地理的に台北は「華北」ではないはず。念のためWikipediaを確認すると下のような説明でした。
華北(かほく、North China)とは、中国北部地域の呼称である。華北平原とは、多分に重なるが、必ずしも完全に一致しない。
出典: Wikipedia
うん。どう考えても台湾・台北はいずれも「華北」ではない。
もしかすると私が知らないだけで「華北台北」なる言い回しをする場合があるかもしれない。そこで日本人・台湾人の日台交流歴ン十年の先輩10人ほどに聞いてみました。しかし全員こんな表記は初めて見たとのこと。そりゃそうだろう。
こんな謎表記が日本の官庁である出入国在留管理庁(2019年3月までは法務省入国管理局)で行われているのか・・・
しかし表を眺めていると、さらに目を疑うことがありました。高雄から関空へ帰ってきたときの表記が次のようになっていたのです。
[box class=”green_box” title=”履歴表示”][/box]
高雄は「中華台北」だと・・・
ここに来て当初予想していた「中華台北」が出てきました。いやいや、台北の国名表記は「華北台北」で高雄は「中華台北」、なんで別の国扱いしてるんだろう?
あっ! もしかして「台北=天龍國だから他の台湾の都市とは違う」っていう深ーーい意味が込められてるとか??
しょうもない妄想はさておき、 お堅い日本の官庁である出入国在留管理庁がこんな情報不一致の状態だと言うことに驚きました。
法務省は半世紀前の通達を忠実に守って戸籍の表記を「中国」としています。 もちろん出身地によって 戸籍の国籍表記が異なることはありません。
その一方で法務省の外局である出入国在留管理庁 (2019年3月までは法務省 入国管理局) は台湾の都市ごとにに別の表記をしているのです。
政治的な意見ではなく、一般論として同じ省庁で国名表記ルールが統一されていないのは日本のお役所としておかしいように思います。
出入国在留管理庁へ問合わせてみた結果
あまりにも不思議な扱いをしていたので、出入国在留管理庁に問い合わせてみました。
情報システム管理室の担当者によると、出入国履歴の履歴は航空会社が出入国在留管理庁に提出する情報をそのまま記載しているとのこと。そして出入国在留管理庁から航空会社に対して、国名表記を指示したことはないとの回答でした。
それはそれで疑問に思いました。日本の航空会社であれば様々な忖度が行われ台湾を「中華台北」とする可能性はあるでしょう(それでも「華北台北」はないような気がしますが)。しかし私が利用したことがある中華航空、エバー航空、日本航空、キャセイパシフィック航空のいずれも台北を「華北台北」としていました。日系、台湾系ともに同じ表記をしているのです。
出入国在留管理庁が言うように行政の指示がないのであれば、これほど航空会社間で表記内容が一致するのでしょうか? 台湾系航空会社が自ら進んで「華北台北」「中華台北」を選んだとは思えません。何の忖度もなければ「台湾」「中華民国」あたりを選ぶでしょう。まして台湾のフラッグキャリアである中華航空が自ら進んで「華北台北」にするとは思えません。
まとめ
出入国履歴を取り寄せて思いもよらず次のことが分かりました。
- 出入国在留管理庁の出入国履歴では、台湾の国名が統一されておらず都市ごとに異なる。
台北は「華北台北」、高雄は「中華台北」。 - 出入国履歴は航空会社から提出される情報をそのまま記載している(情報システム管理室の担当者情報)
- 行政から国名表記の指示はしていないが、航空会社間で国名表記が一致している。
今ひとつ腑に落ちないところもあるので、引き続き調べていきたいと思います。