台中夜市とは
2020年11月6日〜8日の三日間、名古屋市栄のメディアヒロバ(旧・もちの木広場)で台中夜市(名古屋市HP)を開催しました。
台中夜市は名古屋市と台中市が締結した「観光分野におけるパートナー都市協定」の1周年を記念するもので、名古屋市・日台交流サロン・日台若手交流会の三者が共同主催で実施しました。
実はこの台中夜市の開催が決まってから実行まで極めて短い期間で準備しました。キックオフミーティングは10月12日、実に開催まで1ヶ月を切っていたのです。
前振りは台湾交流史セミナー
キックオフミーティングに先立つ7月末と9月末の2回、名古屋市職員や市会議員が参加する台湾交流史セミナーで私が講師を務めました。この時、台中市との交流を担当する部門の皆様とご縁をいただきました。
名古屋市は中国南京市と姉妹都市になっており、名古屋市側は台中市との交流にいろいろと気を遣っている印象を持ちました。その点、民間団体である私たちは自由に立ち振る舞えます。そして従来からある台湾ネットワークを活用すれば名古屋市の交流をサポートできる。そんなことを考えていました。
そして9月末の台湾交流史セミナーを終えた後「都市協定締結1周年を祝うイベントをしたい」と名古屋市から相談を受けました。かくして生まれたのが台中夜市です。
いい加減な台湾イベントならやるな!
台中夜市の開催が決まってからとにかく慌ただしかった。
12ブース用意するのは決まっていたので、出店してくれる店を探さないといけません。しかも夜市らしい構成にしなければなりません。台湾の夜市に行けば、飲食店だけでなくゲームや物販の店もあります。これを名古屋で再現するのが目標です。
夜市のゲームは日台若手交流会が他のイベントでも実施しているのでノウハウがあります。物販も台湾をテーマにした雑貨クリエーターに声をかけられます。
問題は飲食店です。
台湾イベントは各地で行われていますが、「台湾と関係ない物を売っている」「中国人が台湾を名乗って適当な商売をしている」という噂も聞こえてきました。
実際、出店依頼をしたある台湾人経営者は「こんな短期間でまともに準備できるわけない」「変な出店者と同類扱いされたくない」「いい加減な台湾イベントならやるな!」と声を荒らげました。一部のおかしな台湾イベントの姿を見て「台湾を利用して金儲けしている」と映ったようです。
その方には「私が出店者管理するので変な業者は入れない」「名古屋市が初めて台湾に目を向けたイベントなので、絶対に成功させて来年以降に繋げたい」と説得し、納得して出店してもらいました。それだけでなく信頼できる台湾料理店に声をかけていただき、クオリティ確保の大きな力になってくれました。
このような台湾イベントをすると大勢の参加者で盛況になる事も多いですが、必ずしもすべての台湾人に好感を持たれているわけではないようです。「台湾を利用して金儲けしている」と思われると、中長期的に見て日台交流のマイナス要因になります。そのあたりのことを主催者はよく考えて動かないといけないのです。
実は出店者を探している時に名古屋市役所へ中国系の店や奇妙な店が「出店したい」と問い合わせしてきました。しかし名古屋市に問い合わせがあっても私の所へ転送するように事前に依頼していました。そのためそのような店はシャットアウトできましたが、もし出店者選定を行政に丸投げしていたらこうはならなかったでしょう。
最終的には12ブースすべての出店者が決まり、出店してほしい店に泣く泣くお断りしなければならないほどでした。
本物の台湾料理店大集合
出店依頼したのは台湾人経営の店や、台湾への理解が深い日本人経営のお店です。本来でしたら他にもお声がけしたい店があったのですが、残念ながらブース数の制限により断念しました。
しかしながら名古屋市内はもちろん豊橋市、津島市、蟹江町の台湾料理屋さんが出店に応じてくれました。さながら名古屋周辺の本格台湾料理屋さん大集合の様相を呈しました。
他都市からの参加
名古屋で行う台中夜市ですが、名古屋のお店ばかりでは台湾通には物足りません。せっかくのイベントなので東京や大阪のお店にも出店依頼をしました。
しかし飲食店は準備期間が短いことや本格的な調理ができないことを理由になかなか引き受けてもらえません。そんな状態の中、チャレンジして出店してくれるお店がありました。東京都練馬区に店を構える藍鵲 ~Lan Che~(ランチェ)さんです。こちらは東京在住の友人が紹介してくれました。
藍鵲さんは日台ハーフの旦那さんと日本人の奥さんが仲良く経営するお店です。黒糖を使ったタピオカが特徴的で、優しさの中にしっかりとした深みがある甘さが絶妙です。黒糖タピオカラテ、黒糖タピオカケーキ、ランチェ茶を販売してくれました。
物販では東京から台湾を応援する会が台湾応援ゆるキャラ・タイワンダー☆のグッズを持ってきてくれました。また関西からは小籠包文鳥さんが可愛らしい台湾雑貨を販売しました。
東の台湾を応援する会と、西の小籠包文鳥が同じブースで交流しながら販売する姿は、観光パートナー都市協定の項目のひとつ「民間及び青少年の交流促進」を体現しているようです。東京にも大阪にもアクセスしやすい、名古屋ならではと言えます。
ステージ
ステージでも台湾気分を盛り上げていきました。
洸美-hiromi-
オープニングから2日目までライブを熱演してくれたのは台中出身の日台ハーフ・洸美さん。
洸美さんとは昔からの友人で、今年2月公開した映画「恋恋豆花」で挿入歌を歌い、本人役で出演もしていました。名古屋上映初日の3月7日、舞台挨拶に訪れた洸美さんと「名古屋と台中の交流で何かできると良いね〜」と話していたことが実現しました。
洸美さんはオープニングセレモニーを始め、ミニライブで何度も歌ってくれました。透き通った歌声にみんな魅了されました。
今後も名古屋と台中の交流で洸美さんが登場するかもしれないので、要チェックです!
SARIKAKA
2日目の夕方のステージにSARIKAKAが登場しました。
SARIKAKAのメンバーは名古屋近辺在住のアミ族で、ステージでは伝統的な踊りを披露してくれました。台湾原住民のアミ族と言えば夏になると台湾東海岸を中心に開催される豊年祭が有名です。台湾に行けない今、アミ族の伝統舞踊が日本で見られるのは貴重です。最後はSARIKAKAのメンバーと来場者が手を繋ぎ一緒に踊りました。
「台湾・台中市の清水サービスエリアを起点とするインバウンドプロモーションに関する連携協定」締結式
観光パートナー都市協定とは別に、2020年1月18日から台中市内にある清水サービスエリアの運営をNEXCO中日本が担当しています。
これまで行政と関係なく運営していましたが、名古屋市のPRを台中で行う一環として清水サービスエリアに名古屋PR区画を設ける動きがありました。この動きを現実の物とすべく、NEXCO中日本 、中日本エクシス株式会社、名古屋市観光文化交流局、名古屋観光コンベンションビューローの4社が協定を締結するためのセレモニーが挙行されました。
協定の名称は「台湾・台中市の清水サービスエリアを起点とするインバウンドプロモーションに関する連携協定」。
清水サービスエリアの3階フロアは「和」をテーマとしており、そこに名古屋メシや名古屋観光情報を発信する拠点ができるのです。
台中市内に名古屋情報発信拠点ができた記念すべき日です。
台中夜市の人々
台中夜市は3日間で1万人(主催者発表)の来場者を迎えました。2日目は雨天でしたが雨がやむとすぐに行列ができました。初日と3日目は終日行列が途絶えなかったです。
宣伝広告費に1円もかけなかったにも拘わらず、本当に大勢の方に来場いただきました。SNSで告知しただけで爆発的に広まったのも、台湾を愛する人々が台湾に対する渇望を抱えていた証拠でしょう。
来場した人の中には「台湾へ行けない日々が続いていたけど、台湾気分を味わえて良かった」「台湾の匂いがする」「この雰囲気を味わえただけで嬉しい」という言葉をいただきました。
またある在日台湾人は「新型コロナの影響で帰省できないけど、故郷の味を食べられて感動した」と涙ぐむ人もいました。
各ブースの商品価格も店舗販売と同レベルの金額設定で、イベント価格(割高)にしていません。実に良心的です。
時節柄、新型コロナウイルス対策はしっかりやる必要がありました。保健所や行政の指導の下、各店舗やイートスタンドにアルコール消毒を設置し、共用部分の定期消毒を実施しました。
第3波が来る前だったとはいえ、台中夜市の実施について様々な意見があるのは承知しています。しかし故郷の味に涙する在日台湾人をはじめ、来場者の声を聞くと意義あるイベントだったと言えるでしょう。
最後になりますが、短期間でイベント実施にこぎ着けたのも、出店者・出演者の皆さんの努力・協力の賜物です。また、ふじた和秀会長をはじめ名古屋市会日台議員連盟は事前準備から当日までご尽力いただきました。名古屋市観光文化交流局観光推進課の皆さんは土日も休み無く準備に取り組んでくれました。そして何より台中夜市がトラブル無く盛会に開催できたのは来場者のみなさんのおかげです。
台中夜市に関わったすべての方々にお礼申し上げます。ありがとうございました。