スーパーサイエンスハイスクール(SSH)
スーパーサイエンスハイスクール(SSH:Super Science High school)は2002年度から文科省が始めた制度です。将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習等を行う高校をSSHとして指定しています。2017年度は日本全国で203校が指定されています。
文科省よりSSHの指定を受けた学校には、科学技術振興機構(JST)が活動推進に必要な物品購入、研修・講師費用等の支払いを行うほか、発表会の企画運営や情報提供等をしています。
似たような制度として2014年度から始まったスーパーグローバルハイスクール(SGH:Super Global High school)があります。こちらはグローバルリーダーの育成を目的にしています。
SGHのプログラムによる高校生日台交流の姿はこちらの記事で紹介しました。
SSHによる高校生日台交流
SGHと同様にSSHにおいても国際交流や英語によるプレゼンテーション能力を向上させるため、台湾の高校と交流しています。例を挙げると次のとおりです。
- 千葉県立舟橋高校:新竹実験高中、蘭楊女子高中、板橋高中
- 筑波大学附属駒場高校:台中第一高中
- 山梨県立甲府南高校:延平高中
- 大阪府立高津高校:台南第一高中
- 大阪府立泉北高校:彰化高中
- 兵庫県立龍野高校:台南女子高中、武陵高中、成功大学
- 奈良県立奈良高校:新竹科学工業園区実験高校
- 愛媛県立松山南高校:建国高中、武陵高中、開南大学
etc…
それぞれ学校間の相互訪問や生徒による英語プレゼンテーションを通して交流しています。また高校生同士に限らず、日本の高校生が台湾の大学を訪問し、ディスカッションする学校もあります。内容はSGHと異なり、科学分野に特化したものになります。SSHの交流をきっかけに姉妹校になるケースもあります。
大阪府立泉北高校と彰化高中の事例
大阪府立泉北高校はサイエンス部員が彰化高中を訪問しました。参加した日本人生徒は次のように感想を綴っています。
台湾での合同研究発表会で研究発表を行って
私たちサイエンス部員2人は、(筆者注:2016年)12月22日 23日に台湾の彰化高校に発表をするために行きました。彰化高校は以前泉北高校で交流した高校で、訪れて最初に彰化高校の生徒さんが台湾にある果物、台湾のカップラーメン、お茶など台湾の名産を説明してくれました。グアバのドライフルーツを作る過程を教えてもらい、実際に食べてみました。甘くはなかったですが、弾力があり美味しかったです。その後、別の部屋に移動して、研究発表を行いました。最初に彰化高校から4題の発表があり、私たちの発表の順番になり、今回は英語の発表だったので、普段日本語で発表していた私たちは練習はしていったのですが、彰化高校の生徒に理解してもらえるのか不安でした。発表が終わると拍手をしてもらい、成功したんだなと思いました。発表が終わったら、10月に泉北高校で交流した時に知り合った生徒と再会することができました。
発表が全て終わると、実際に彰化高校でやっている化学の授業に参加しました。化粧品を作る実験で授業は英語で進みましたが生徒さんが親切にしていただき楽しむことができました。今回の発表で多くの経験をすることができました。この経験を次に活かしたいと思います。
(泉北高校HPより)
SSHによる日台交流の教育効果
理系の学生・生徒は前述の感想からも見て取れるように語学に対する苦手意識を持つ人が多いです。そのため国際交流に消極的になりがちです。しかしSSHによる台湾との交流はその壁を打ち破るために有益です。なぜならネイティブより非ネイティブとの英会話の方が、お互い一歩一歩コミュニケーションをとるので意思疎通しやすいからです。そして意思疎通した実感を得ることにより、語学に対する苦手意識がなくなり自信へと変わります。さらに台湾との交流をきっかけに、台湾語や中国語に対する関心も生まれてくるでしょう。
全国修学旅行研究協会の調査によると、2016年度の海外修学旅行の行き先は台湾が1位になりました。人数にして43,993人、これは海外修学旅行に参加する学生の4.9人に1人が台湾を訪問していることになります。これをさらに増やすためには、訪台修学旅行を実施する高校の多様化やSSHのように特色ある交流を実施する高校が求められます。
SSHによる日台交流は、台湾と関わる人材の裾野を広げるのにとても役立っていると言えます。