修学旅行を通した日台交流における地方行政~長野県を例として~

修学旅行を通して高校生が日台交流する様子を次の2件の記事で明らかにした。
記事でも触れたが日本に修学旅行で来ている外国人高校生の内、約4分の3が台湾人である。
そして台湾人高校生は都心部のみならず長野、熊本、静岡のような地方都市にまで足を運ぶのだ。

今回は台湾からの修学旅行を受け入れる地方行政を、長野県を例に紹介する。

(2017年10月6日配信) 修学旅行から読み解く日台交流

(2017年11月3日配信)【SGHにおける高校生日台交流】お茶の水大学附属高校の事例

日本政府は観光立国推進閣僚会議の「観光ビジョン実現プログラム2017」の中で、訪日教育旅行(修学旅行)の活性化に言及している。
2020年までに6万人の訪日教育旅行生を受け入れるという具体的な数値目標もある。これは2013年の4万人の1.5倍である。
プログラムの中では「台湾をはじめとする訪日教育旅行に関心のある市場」との表現があり、日本政府が台湾を特に重視しているのが分かる。

また台北駐日経済文化代表処(駐日台湾大使館)が2016年に行った「台湾に関する意識調査」には、日本政府と台湾政府が相互理解を深めることを目的とする青少年交流事業についてのアンケートがある。
今後、修学旅行を特に促進すべきとした人は45.8%であり、スポーツの60.0%に次いで2番目に修学旅行の促進が求められている。

修学旅行の活性化は日本と台湾の共通の願いと言える。

10月6日配信記事で紹介したとおり、訪日外国人高校生の74%が台湾人である。
そして台湾人高校生の訪問先として一番人気は長野県である。
実に4人に1人が長野県を訪れている。

何故長野県なのか?
それは県をあげての活動の成果である。

訪日教育旅行には二つの側面がある。
それは「観光」と「教育」だ。
一般的に行政組織では観光部局と教育部局は別組織である。
訪日教育旅行を促進しようとしても、縦割り行政のため連携が上手くいかないのだ。

この問題を長野県は国際観光推進室がコーディネーターとなることで解決した。
英語や中国語が出来る職員を配置するほか、校長経験者も配属されている。
国際観光推進室が対外的な窓口になり、観光部局と教育部局に役割分担して全体をまとめているのだ。

さらに長野県観光振興基本計画[2013-2017]において、訪日教育団体数を41団体(2011年)から2017年までに120団体に増やすことを目標としている。
県の観光政策として訪日教育旅行に言及しているので予算措置も執りやすい。
教育旅行だとホームステイの希望も多いが、長野県は受入可能な農家を生徒400名分確保している。
また通訳ボランティアをリスト化し、教育や文化に関する通訳がスムーズに進むように研修も行われている。

長野県が熱心に訪日教育旅行を誘致しようとしている現状が見て取れる。

ところで観光庁・文科省が2015年に出した訪日教育旅行受入促進検討会報告書によると、訪日教育旅行の受入れ「課題」として次の点を上げている。
1.交流受入の調整を行う人材の不足
2.スケジュール調整等の困難さ
3.地域に於ける経費の負担
4.通訳確保の困難さ
5.訪問・受入の意義に関する相互理解・認識のギャップ
6.直前キャンセル等
7.ホームステイ先の確保と安全管理

これらの課題解決には長野県の事例が参考になるが、2,6について補足したい。
2,6は直前になってプログラム変更やキャンセルされる場合である。
日台交流の実務者は思い当たる節があるのではないだろうか。

日本の習慣だと事前に万全の段取りをして当日を迎えるのが一般的だ。
特に自治体などの公的機関ではその傾向が強いだろう。
段取りがしっかりしている分、日本人は突然変更があると困るのだ。

個人的な経験を振り返ると、台湾人は「現場で何とかする能力」が極めて高い。
日本人とは逆に、台湾人は段取りをそこそこにして後は現場で何とかするのだ。
ただし段取りそこそこのため、日本人より若干効率が悪く感じることもある。

日本人/台湾人のどちらが正しいというのではない。
報告書では2,6を「課題」と捉えているが、台湾人の「現場で何とかする能力」を学ぶ良い機会なのだ。
日本人の感覚では受け入れがたい変更であっても、台湾人は現場で何とかしてしまうことが多々ある。

訪日教育旅行は台湾の高校生が日本で学ぶだけでなく、受け入れる日本側にも学びがある。
書物を読むだけでは分からない日本人/台湾人の良いところが、人と人とが交流することによって見えてくるのだ。
訪日教育旅行の受入れは単なる観光客誘致ではなく、日台相互理解の要素も含んでいるのだ。

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